barbe_generative_diary SOUNDS の フィールドレコーディング

そもそも、私はサウンドエンジニアでもミュージシャンでもなく、音楽の学校に通ったり、ポストプロダクションに勤めた経験は全くありません。音声との関わりは、仕事にて映像ディレクションを行う際、映像企画での音楽イメージや選曲、撮影時の音声録音くらいの事でした。

私がフィールドレコーディングを始めたのは、“Sound Visualization(音の視覚化)”というプロジェクトテーマのもとプログラム・アートを作るため、必要な音素材を簡易にてレコーディングしたことがきっかけでした。その後、様々な環境音に夢中になり、レコーディング技術や編集など、完全に独学で音について学び続けています。

下記の映像は、以前、録音した”活版印刷機の稼働音”です。独特でレトロな機械音のレコーディングを行いました。(※ステレオの無指向性マイクとコンタクトマイクにて録音しています。)

Sound Visualization(音の視覚化)

フィールドレコーディングをはじめたい人

本記事は、「フィールドレコーディングって何だろう?」「やってみたいけど何から始めたらよいのか分からない…。」「機材は何があればよいの?」など、フィールドレコーディングをはじめるための最初の疑問に答える内容です。

Index

フィールドレコーディングとは。

フィールドレコーディングという言葉を聞くと、森や川、山や海など、自然の中でレコーディングするものだと思われがちですが、それ以外にも、人が多く集う街中や、駅や空港など人工的な場所もまたフィールドでのレコーディングになります。

一般的に“フィールドレコーディング”の意味は、“スタジオレコーディング”の対義語。音響が完全にコントロールされたスタジオ録音以外をフィールドレコーディングと呼びます。

フィールドレコーディングは、マイクロフォンを通して、空間の響きと時間の流れを記録します。記録した音を聴覚的に観察すると、私たちはとても多くの音の中で生活していることに気づかされます。

なぜ、写真ではなく録音なのか。

今や、スマートフォンで誰でも気軽に写真を撮れる時代。私たちは、何気なく撮った写真を誰かに見せるわけでもなく、単に記録として撮影を行なっていたりします。ですが、写真と同じように音声だけを録音する人はあまり見かけたことがありません。

録音の魅力は、“記録の曖昧さ”にあるように思います。

日常生活において、人の知覚のほとんどは、視覚から得ています。聴覚を使用する録音は写真ほど鮮明な記録ない代わりに、音の世界が持つ特有の曖昧さを記録します。

曖昧な記録とは例えば、木々を通り抜ける風の音が、海の波の音に聞こえたりと、記録された音は、私たち自身のこれまでの経験や記憶と結びつき、時間の経過と共に変化する新しい感覚を味わうことができます。

なぜ、写真ではなく録音なのか。この問いは、“フィールド・レコーディングの現場から”という本のエッセイにあったものを引用しました。この本は、7人のフィールドレコーダーとの対談を中心にフィールドレコーディングの魅力と取り組みへの姿勢を知る事ができます。

フィールドレコーディングをはじめよう。【最も簡単な方法】

フィールドレコーディングを一番手っ取り早く体験する方法は、スマートフォンの録音機能アプリ(ボイスメモ)を使用します。

録音して視聴し、まず気づくことは、“録音時に自分の耳で聞いた音”と“録音された音”の印象が明らかに違うことです。

私たちの耳はとても高性能にできており、聞きたいものを聞くため、聴覚は無意識のうちに対象物に自然とフォーカスを合わせる仕組みができています。いわゆるカクテルパーティー効果呼ばれるものです。

マイクを通し録音を行うと、周囲を取り巻くあらゆる音が均一に記録されます。録音された音は、私たちの耳がライブで聴いた音以上に多くの音を感じる事ができます。

  • カクテルパーティー効果(Wikipedia抜粋)
    カクテルパーテーのように、たくさんの人がそれぞれに雑談しているなかでも、自分が興味のある人の会話、自分の名前などは、自然と聞き取ることができる。このように、人間は音を処理して必要な情報だけを再構築していると考えられる。

フィールドレコーディングに必要な機材

一般的なフィールドレコーディングの機材は下記通りになります。

  • レコーダー(音を記録する)
  • マイクロフォン(音を収集する)
  • ヘッドフォン(モニタリングする)
  • ケーブル(マイクとレコーダーを接続する)
  • マイクスタンド(マイクを固定する)
  • ウィンドスクリーン(風によるノイズを軽減する)

クオリティの高い音を録音するにはそれなりの機材一式が必要になります。

ですが、初心者が始める場合、マイクとレコーダーが一体となったハンディレコーダーがあればフィールドレコーディングをはじめることができます。

ハンディレコーダーは、瞬時にバッグから取り出し、手軽に録音できるため、多くのフィールドレコーダーも利用しています。

どのハンディレコーダーを買ったら良いのか迷った場合の参考として、フィールドレコーディングで良く見かける機材を下記にて3種ピックアップしました。もちろんその他にもあります。

  • ZOOM H1n(¥7,990)
    本格的なXYステレオマイクによる優れた音質録音とコンパクトな使いやすさが人気です。
  • TASCAM DR-05X(¥16,500)
    コストパフォーマンスが高く、コンパクトで人気の高いハンディレコーダーです。
  • TASCAM Portacapture X8 (¥75,680)または X6(¥54,780)
    タッチパネルによる操作と32-bit float録音対応のハンドヘルドレコーダーです。外部マイクと接続でき、自由度が最も高いハンディレコーダーです。barbe_generative_diaryでも使用しています。

まとめ

メラビアンの法則によれば、人と人とのコミュニケーションにおいては、視覚情報が55%、言語情報が7%、聴覚情報が38%のウェイトで心理的な影響を与えるという結果があります。

聴覚は視覚の次の感覚器官としてさまざまな情報を含んでおり、聴覚の曖昧な情報はユーモア溢れるさまざまな表現に役立ちます。映画の効果音からミュージック・コンクレートのような非音楽の制作など、自身の趣味や創作活動に加えてみてください。

フィールドレコーディング おすすめの本

フィールド・レコーディング入門 響きのなかで世界と出会う – 柳沢 英輔

初心者にも分かりやすいようにフィールドレコーディングの魅力を解説しています。「フィールド・レコーディングとは何か?」「音とは?」「聴くこととは?」など、その他にも「歴史や理論」はもちろん、「実践的な機材の紹介・録音方法や環境の作り方」なども学べます。

実際、読むだけでなく、今すぐフィールドレコーディングに行きたいと思える本。カメラを旅行に持っていくように、ハンディレコーダーを持って出かけましょう。

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『フィールド・レコーディング入門 響きのなかで世界と出会う』(柳沢 英輔)
初版/ 2022.4.26
ページ数/302ページ
出版社/フィルムアート社
言語/日本語
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barbe_generative_diary SOUNDSでは、Sound visualizationの実験のために録音した音素材を“bandcamp”にてロイヤリティフリーで公開しています。