• フィールドレコーディングの全体の進め方が知りたい。
  • フィールドレコーディングの具体的な録音手順が知りたい。
  • フィールドレコーディングをはじめる際のオススメ機材が知りたい。

といったフィールドレコーディングに興味があり全体のイメージを掴みたい人や、はじめての機材選びで悩んでいる初心者へ向けた記事です。この記事では、フィールドレコーディングの大まかな理解と始め方を解説します。

barbe_generative_diary SOUNDS の フィールドレコーディング

私がフィールドレコーディングを始めたのは、“Sound Visualization(音の視覚化)”というプロジェクトテーマのもとプログラム・アートを作るため、必要な音素材を簡易にてレコーディングしたことがきっかけでした。その後、様々な環境音に夢中になり、レコーディング技術や編集など、完全に独学で音について学び続けています。プログラム・アート実験作品については、Instagramにまとめています。

Index

Chapter.1 – フィールドレコーディングのすすめ|全体の流れ

ざっくりとですが、フィールドレコーディングの全体の流れを紹介します。

フィールドレコーディングの方法はその目的や録音者によってさまざま、大まかには、計画に沿った録音と、偶然得られる音の録音に分けられます。

私の場合の流れは下記通り。

  • 準備(使用する機材の準備、マイクやレコーダーの選定)
  • ロケ地にてセッティング
  • 録音
  • スタジオに戻り、録音したファイル管理・振り分け(メタデータ等)※1
  • 編集(Adobe Audition にて音やノイズの調整。)
  • 録音した音は、サウンドアートでの利用やサウンドエフェクトライブラリとしてまとめる。

※1 ファイル管理についての詳細はこちらで解説しています。
サウンドエフェクトライブラリの管理方法|The Universal Category System

また、普段の生活でも録音チャンスを逃さないために、常にハンディレコーダーをバッグに忍ばせています。

Chapter.2 – フィールドレコーディングの録音方法|3段階

初心者がはじめから機材を揃えるのはコスト的にも経験的にもハードルが高いで、下記のお試し方法でフィールドレコーディングを体験したのち、少しづつ自分に合った機材を購入していくと良いです。

2-1 簡易:今すぐレコーディングを始める方法(お試し)

もっとも簡単にフィールドレコーディングを楽しむ方法は、手持ちのスマートフォンの録音機能を使用します。一般的なスマホには録音アプリがデフォルトで入っているので、近くを散歩しながら、気になる音を何となく録音し、帰ってから聞き返したり編集を行ってみましょう。

録音時のモニタリングでは空間に溶け合う感覚があります。また、持ち帰って音を聞き直した時、録音時で感じた音の感覚が微妙に変化します。いろんなフィールドレコーディングの楽しみ方を発見してみてください。

2-2 手軽:ハンディレコーダーで録音する方法

さらに良い音質や機材環境を整える場合、オススメなのがハンディレコーダー。これひとつあれば、すぐにでもフィールドレコーディングを始められます。

各社さまざまなハンディレコーダーが発売されていますが、オススメは36bit floatで録音できる機器です。32bit floatの詳しいことは検索するとたくさん出てくるので省きますが、録音の音量調整を細かくする必要がなく、初心者でも安心して手軽に録音する事ができます。

2-3 一般:機材をセッティングして録音する方法

フィールドレコーディングに必要な一般的機材は下記通り。

  • レコーダー(録音機器)
  • マイクロフォン(集音機器)
  • ケーブル(マイクとレコーダーを繋ぐ)
  • マイクスタンド(ステレオの場合はステレオバーなども)
  • ウインドスクリーン(屋外で録音の場合は必須)
  • ヘッドフォン(モニター用)

※セッティングは録音対象や録音方法によって異なります。

マイク設置(マイキング)は、ヘッドフォンでモニタリングしながら行います。レコーダーの調整を加えながら、良いセッティングを探ります。

Chapter.3 – 録音の手順

まず、やった方が良い録音時のポイントは、音以外の情報の記録です。

「いつ・どこで・どのよう」に録音したかを記録しておくと、音データを持ち帰って整理する際に役立ちます。

3-1 録音場所を記録する

録音場所の記録は2つの方法があります。

簡易な方法としては、Googlemapなどの地図アプリで現在地のスナップショットをとります。スナップショットは、日時も一緒に記録されるため、録音データの時間と照らし合わせ録音した場所の把握を行ういます。

もうひとつは、スマホカメラで録音場所の写真を撮影します。写真にジオタグを付け加えます。ついでにセッティングした録音機材と周囲の風景写真を引きで撮影しておくと、機材情報も合わせて記録することができます。

3-2 録音開始時に声で必要な情報を記録する

録音開始時に、録音環境を声で記録しておきます。どういった場所での録音か、天候や時間(昼か夜か)などを記録します。

川での録音を例として、
「〇〇川の上流、多くの木々で囲まれた川中、岩場にポールを立て録音。透き通った水、細かな滝がいくつかあり、空には数羽 小鳥が飛んでいる。晴れ、昼時間(デイタイム)。」
といった内容を記録し、後ほど聞き返した時に、音だけでは分かりづらい録音空間の情報を声で記録します。

3-3 録音の開始点

録音の開始合図として、マイクの前で軽く手を叩きます。「ヨーイ、スタート」の合図です。音のイン点(録音開始点)を作っておくと、編集時に波形データを見て録音開始箇所をすぐに見つけることができます。

録音中は音に耳を傾け、環境音を楽しみます。

録音中、自身が出す音(ノイズ)に注意が必要です。思いのほか、着ている服の擦れる音や足音などが録音されます、その場でじっとするか、マイク位置から静かに離れましょう。(事前に服装に気を使うと良いです。カサカサ音を出る素材の上着など。)

Chapter.4 – フィールドレコーディング おすすめの機材と本

4-1 フィールドレコーディング おすすめの機材

気軽にフィールドレコーディングを始めたいのであれば、
ハンディレコーダーの“ZOOM H1 / 32bit float”(¥11,900)2024年発売
または、“TASCAM DR-05X”(¥16,500)などがオススメです。

後々、外部マイクなども使用も考えている場合は下記に紹介するXLRコネクターによる接続が可能な機器がオススメです。

TASCAM Portacapture X8

もっともオススメするフィールドレコーディング機材です。ラージダイアフラムコンデンサーマイク付属のハンドヘルドレコーダー。これ一台をバッグに忍ばせておけば、いつでもどこでも取り出してすぐに録音することができます。外部マイクロフォン接続のためのXLRコネクターが4つあるで、外部ステレオマイクとコンタクトマイクやハイドロフォン(水中マイク)などを合わせ、自由なセッティングで録音を行う事ができます。

機能は、現在の最新技術である 32-bit float 録音、入力レベルを細かく調整する必要がありません。

購入価格を抑えたいのであれば、少しコンパクトになった TASCAM Portacapture X6 という商品があります。機能はほぼ同様、違いはXLRコネクターの数が2つです。

全ての機器において屋外で録音する際、ウインドスクリーンは必須です。剥き出しのマイクに微風でも風が当たるとノイズが発生します。機器に合ったウインドスクリーンを購入してください。

ハンディで録音する際、レコーダーを持つ手のノイズも録音されやすいので、グリップを取り付けると多少抑えられます。Ulanzi ミニ三脚 などコンパクトで使い勝手が良いです。

4-2 フィールドレコーディング おすすめの本

フィールド・レコーディング入門 響きのなかで世界と出会う – 柳沢 英輔

フィールドレコーディングに特化した日本語書籍は少なく、本書は貴重な入門書です。フィールドレコーディングの魅力を初心者にも分かりやすく解説しています。

「フィールド・レコーディングとは何か?」「音とは?」「聴くこととは?」など、その他にも「歴史や理論」はもちろん、「実践的な機材の紹介・録音方法や環境の作り方」などを学べます。

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初版/ 2022.4.26
ページ数/302ページ
出版社/フィルムアート社
言語/日本語
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