ピエゾコンタクトマイクは安価でDIYすることができますが、音質的にいくつかの問題点が生じます。その問題のひとつとしてインピーダンスの不一致が挙げられます。本記事はインピーダンスマッチングにおけるインピーダンストランスフォーマー比較テストと合わせ、ピエゾコンタクトマイクの特徴について詳しく解説した内容です。

以前の記事、DIY | Contact Microphones ではピエゾ素子を使ったコンタクトマイクの作り方を記載しました。固体振動を拾うだけを目的としたマイクとしては問題ないですが、良い音質にて録音したい場合は、いくつかの問題をクリアしていく必要があります。

今回インピーダンスマッチングと言われる、出力側(マイク)と入力側(レコーダー)のインピーダンスを揃え、同状況下にて録音した音のABテストを行います。

Index

インピーダンストランスフォーマーとは。

インピーダンストランスフォーマーとは、入出力にてインピーダンスを変えるシステムになります。

今回使用するインピーダンストランスフォーマーはピエゾコンタクトマイクとの相性が非常によいとされる Hosa MIT-129 を使用、50k 出力インピーダンスを 200R 入力インピーダンスに合わせるように設計されています。✓ また、これはスポンサー付きのレビューではありません。

結論から先に述べると、インピーダンストランスフォーマーを使用すると低音域が劇的に改善されます。

Hosa MIT-129のパッケージ裏面には下記なようにて記載されています。

  • Maximizes signal fidelity when using.
    信号の忠実度を最大化します。
  • Minimizes high frequency and level loss caused by signal reflections.
    信号の反射によって生じる高周波およびレベルの損失を最小限に抑えます。
  • Eliminates noise and hum caused by an impedance mismatch.
    インピーダンス不整合によって生じるノイズやハムを排除します。

ピエゾコンタクトマイクの特徴

ピエゾコンタクトマイクはとても小さな静電容量を持つため、低周波数領域で高いインピーダンスを引き起こします。これは静電容量、インピーダンス、共振周波数の関係からきます。

要は、ピエゾ素子のみのコンタクトマイクは、低音域がないチープな音になります。下記に少しだけピエゾ素子のインピーダンスについての内容を詳しく記載します。

ピエゾ素子の基本

ピエゾ素子は、圧力や力が加えられると電圧を発生する、または電圧が加えられると機械的な変形をする材料です。この特性を利用して、センサーやアクチュエーターとして使用されます。

共振周波数(Resonance Frequency)

共振周波数は、ピエゾ素子が最も効率的に機械振動を発生する周波数です。このとき、素子のインピーダンス(抵抗)は最小になります。

  • インピーダンスの挙動
    周波数が共振周波数に近づくと、インピーダンスは減少し、共振周波数で最小になります。
    この状態では、素子は最大の機械振動を発生し、電気エネルギーが機械エネルギーに最も効率的に変換されます。
  • インピーダンスのグラフ
    共振周波数ではインピーダンスが急激に低下し、ピット(谷)のような形をとります。

反共振周波数(Anti-Resonance Frequency)

反共振周波数は、共振周波数の次に位置し、ピエゾ素子のインピーダンスが最大になる周波数です。このとき、素子はほとんど機械振動を発生しません。

  • インピーダンスの挙動
    周波数が反共振周波数に近づくと、インピーダンスは増加し、反共振周波数で最大になります。
    この状態では、素子は機械振動を最も発生しにくく、電気エネルギーの機械エネルギーへの変換効率は低下します。
  • インピーダンスのグラフ
    反共振周波数ではインピーダンスが急激に増加し、ピークのような形をとります。

インピーダンスの周波数特性

ピエゾ素子のインピーダンスを周波数に対してプロットすると、以下のような特性が見られます。

  • 低周波数ではインピーダンスが高い。
  • 共振周波数に近づくとインピーダンスが低くなる。
  • 共振周波数で最小値をとる。
  • 共振周波数を過ぎるとインピーダンスが再び増加する。
  • 反共振周波数で最大値をとる。
  • さらに周波数が増加すると、再びインピーダンスが減少していく。

このインピーダンスの特性を理解することで、ピエゾ素子を効率的に利用することが可能となります。コンタクトマイクのセンサーとして使用する場合は共振周波数を避け、ブザーのアクチュエーターとして使用する場合は共振周波数を利用するなどの工夫ができます。

DIYピエゾコンタクトマイクによるABテスト

ABテストを行うにあたり、同じ設定のピエゾコンタクトマイクを製作しました。(ピエゾディスク、ケーブルの種類と長さ、プラグの種類を同様)

左:Hosa MIT-129を使用した場合、右:ダイレクトにレコーダーに繋いだ場合。聞いて分かる通り低音域の違いは明らかです。明らかにしっかりとした低音域が再現されています。

また、付け加えるならゲイン調整が必要になります。またはプリアンプにて増幅するとより一層良い音を得ることができます。

まとめ

DIYでのコンタクトマイクや市販のコンタクトマイクでファンタム電源を使用しないものの多くはこのようなインピーダンスマッチングおよびアンプの使用が必要です。結果、音の厚みと奥行きが劇的に改善します。

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