[Series] はじめてのTidal Cycles : Part.2

Tidal Cycleの演奏や作曲は、ざっくり言うと“音のループ再生”です。リズムブロックをサイクル(周期)で鳴らし、そこに様々な変化をつけて演奏します。

Tidal Cyclesの簡単な仕様

演奏や作曲をする際、まずは、「どのようなテンポにしよう」と考えます。Tidal Cycles のサイクル(周期)は、“CPS”という数値を利用しています。

“CPS”とは「Cycle Per Second」の略で、直訳すると「秒毎のサイクル(周期)」という意味です。1秒間にサイクル数(ループ数)を表しています。

下記コードの ” ” で囲われて部分が1サイクルです。

d1 $ sound "bd bd"

“CPS”の数値は、何も指定がなければ、“1”となっています。1秒間に1サイクル鳴らすという設定です。

サイクルの数である”CPS”を変更する事も可能です、後ほど説明します。

Tidal Cyclesのリズム構成

一般的に私たちがよく知る音楽のリズムのほとんどは4拍子です。”4つ打ち”と言われるダンスミュージックはその典型です。その4拍子をひとまとまりとし、1小節、2小節、3小節…と数えていきます。

では、Tidal Cycles のサイクルと小節の関係性ついて、下記4つのコードを聴き比べます。違いは、1サイクルに入れるbd(バスドラム)の数です。

① d1 $ sound “bd”
② d1 $ sound “bd bd”
③ d1 $ sound “bd bd bd”
④ d1 $ sound “bd bd bd bd”

それぞれ一通り聴くと、1サイクルに入れる音が多いほど、テンポが速くなっているように聞こえます。これはバスドラムを1拍(四分音符)として聴くため

①は、1小節を4サイクル → 4秒
②は、1小節を2サイクル → 2秒
③は、1小節を 1.333…サイクル → 1.333…秒
④は、1小節を1サイクル → 1秒

とbdを追加するごとに1小節のサイクル数・秒数も減っていき、テンポが速くなるように聴こえます。(1サイクルは1秒)

Tidal Cyclesでの演奏のやり方は人それぞれです。おすすめとしては、1サイクルを1小節と考えると分かりやすくなります。

先ほどの で聴いたテンポが1サイクル1小節。聴いて分かるとおり、演奏や作曲には、少しテンポが早いと感じます。

テンポを調整するには、“CPS”の数値を指示することで調整できます。1秒間に入れるサイクル数を変えるということです。

“CPS”でサイクル数を設定する

設定方法はとても簡単。setcps と入力し、その後ろに“1秒間に入れるサイクル数”を入力、“command + enter” で実行します。(d1のコードブロックとは、1行空けて使用します。)

例として、1秒に半分のサイクルだけ“0.5 サイクル”を入力してみます。

setcps 0.5

d1 $ sound "bd bd bd bd"

デフォルトの”cps 1″の半分の速度になりました。

cpsに0.5サイクルをセットするというのは、“bd bd bd bd”の半分”bd bd が1秒ということです。1小節 “bd bd bd bd”を入れるためには、2秒必要ということになります。

また試しに、デフォルトの cps 1 の倍の数、”2”に変更し実行してみます。
すると、1秒に2サイクル入れる事になるので、デフォルトの”cps 1 “の倍の速度になり、とても早いテンポです。

“CPS”の数値は1秒間を意識し、そこにどのくらいのサイクル数を入れるかを考えると分かりやすいです。

“BPM”を利用した設定

楽曲制作で馴染みのある“BPM”を使用する場合、”BPM”を計算し”CPS”に入力することで利用できます。※Tidal Cycles には直接設定するコードがありません。

1サイクルを1小節(4拍)とした時の計算式はこうなります。

BPM数 ÷ 60秒 ÷ 4拍 = “CPS”

例として、120bpmを当ててみます。

120 ÷ 60 ÷ 4 = cps 0.5

コードの書き方は下記です。

setcps (120/60/4)

BPMを入力した数値を変えることで、簡単にテンポを調整することができます。上記コードをコピーして利用できます。

BPMとCPSの違いについて

ここからは、この数式の細かな解説です。

BPMとは「Beats Per Minute」の略で、直訳すると「分ごとの拍」という意味です。BPMの数字は1分間に流れる拍数を表しています。

例えば、ハウスやテクノなどの”4つ打ち”のダンスミュージックは、作曲や演奏にbpm 120が良く使われます。これは、1分間に120拍、バスドラムが1分間に120回打たれる事になります。

一方で、Tidal Cycles で利用される”CPS”という単位は、1秒間のサイクル数でした。

まとめると、BPMは1分間の拍数CPSは1秒間のサイクル数という違いあります。

BPMへの変換式の解説

120bpm / 60秒/ 4拍 = 0.5 cps

上記、先程の式は、1分間に120拍(BPM)を1サイクル4拍で利用した場合、1秒間のサイクル数(cps)をもとめています。

120bpmを60秒で割ると1秒間に2拍になります。1サイクルを4拍(1小節)で使用したいので、1サイクルにおける2拍の割合(%)を調べるためには、2拍を4拍で割ると求められます。その答えが、1秒に入るサイクルの割合になります。いわゆる”CPS”です。ちょっと頭が痛くなりますが、落ち着いて考えるとイメージできます。

すると下記の公式になります。

cps = (bpm / 60 / 1サイクルの拍数)

ついでに、公式の拍数を変えるとどうなるのかを試してみます。
d1 $ sound “bd bd” の ” ” で囲われた1サイクルにバスドラムを2つ(2拍)入れました。同様にbmp を120とする場合、cpsは1となります。

120bpmの拍数違いとして、4拍の場合と2拍のの場合のコードを見比べてください。

setcps (120 / 60 / 4)

d1 $ sound "bd bd bd bd"
setcps (120 / 60 / 2)

d1 $ sound "bd bd"

以上をまとめると、BPMの設定は、1サイクルに入れる拍数(割合:%)によって計算することになります。また、1サイクルの時間軸は可変で、入れる拍数によってテンポの速度が変化します。BPM数や1サイクルの拍数を実際に触って、自分が扱いやすい設定を探ってみてください。

あとがき

以上、Part.2のTidal Cyclesの仕様、リズムの構成とテンポの設定方法になります。”CPS”といった周期での設定は慣れが必要になってくるかと思います。

実際、演奏や作曲する際には、紹介したBPMを利用するための計算式をそのままコピーし、好きなBPMでテンポを決めていってください。

再度計算式コードを下記に貼っておきます。(1行空けることを忘れずに。)

setcps (120 / 60 / 4)

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[Series] はじめてのTidal Cycles
Tidal Cyclesを始めたばかりのビギナーの方へ、また自身の復習のためにシリーズにまとめ更新していきます。コメント等ありましたら、ヘッダーメニューからInstagramまたはTwitterアカウントへメッセージください。下記メニューは随時追加されます。

Part.1 / Tidal Cyclesのサンプルを使って音を鳴らす(基礎編)
Part.2 /Tidal Cyclesの仕様、リズム構成とテンポの設定方法(CPSとBPM)
Part.3 /リズムを作る表記方法(Mini Notation)
Part.4 /オシレーター(Oscillators)
Part.5 /ユークリッドシーケンス(Euclidian Sequences)
Part.6 /オーディオエフェクト(Audio effects)
Part.7 /シンセサイザー(Synthesizers)

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