私たちが普段聴いている音は、空気の振動(粗密)を耳で捉えて感じています。一般的に、人間の可聴範囲は低い音で20Hz、高い音で20kHzくらいまでの間とされています。また、音は気体だけでなく、固体や液体も同じく伝搬し、特殊なマイク(コンタクトマイク・ハイドロフォンなど)を使用すればこれらの音も聴くことができます。

本記事は、固体音と液体音の振動とそのメカニズムや、使用できるコンタクトマイク、ハイドロマイクについてです。人が普段聞くことのできない音を感じることで新たな世界の発見します。

音の固体振動と液体振動

音は空気、水、鉄など、さまざまな物質を伝搬しますが、それぞれの物質によって音の伝わり方や性質は異なります。一般的に固体の音を捉えるにはコンタクトマイクを、液体の音を捉えるにはハイドロフォンを使用します。

音を伝える縦波と横波

空間を伝搬していくエネルギーには、様々な種類がありますが、その中でも特に重要なのが縦波(P波)横波(S波)です。伝播媒質における2つの波の違いを簡単に説明すると、縦波は固体・液体・気体に存在するのに対し、横波は固体・液体※1に存在します。
※1 近年、液体中にも横波が存在する可能性を示唆する研究成果が発表されている。http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/research_highlights/no_47/

  • 縦波(P波)固体・液体・気体
    進行方向と平行方向に振動する波です。バネを前後左右に振ると発生する波などがこれに当てはまります。媒質の疎密の状態が伝播するので、疎密波圧縮波とも言われています。
  • 横波(S波)固体・液体
    波の進行方向と垂直方向に振動する波です。ロープを上下に振ると発生する波などがこれに当てはまります。

音が伝わる速度は密度と弾性率(物質の硬さ)が関係します。固体・液体・気体では、固体が最も早く音を伝播することができます。

音の固体振動

音の固体振動は、固体中を伝わる縦波横波によって発生します。音が伝わる速度は素材によって異なり、鉄で約 5,900 m/s(空気の18倍)、ダイヤモンドで約 12,000 m/s(空気の約 36 倍)です。録音においても音の距離感・位相・広がりなど一般的な気体での録音とは異なります。

Sample.1 : ドライアイスと水

Sample.2 : 活版印刷機の可動音(※ジオフォンにて低音)

Sample.3 : Waves Hitting the Steel pipe(※ジオフォンにて低音)

音の液体振動

音の液体振動は、液体の粒子は固体粒子のように密接に結合していないため、固体振動よりも伝搬速度は遅くなります。水中で約1500m/sで、空気で伝わる速さの約4倍になります。録音においても気体や固体とはまた違う音場を形成します。

Sample.1 : 護岸での水中録音

Sample.2 : 氷を入れた炭酸水

Sample.3 : Rising Tide

固体・液体を録音するマイク

フィールドレコーディングにおいても固体・液体の録音は人気で、多くのフィールドレコーディストがこれらの音を採取しています。これらの音を録音するには、一般的にコンタクトマイクやハイドロフォンといった特殊なマイクを使用します。

コンタクトマイク・ハイドロフォン リスト

さまざまなコンタクトマイクやハイドロフォンがある中からのピックアップ。

  • KORG CM-300
    小さなピエゾ素子を使ったコンタクトマイク。楽器のチューナー用として設計されているため感度は然程良くはないが、安価(1,500円ほど)で手に入れることができる。コネクタが6.3mm端子なのでXLRが必要な場合は変換プラグが必要。
  • AKG C411
    コンデンサー型のコンタクトマイク。小型で粘着ゴムを使って音源に貼り付け使用。音源本来の音を捉えることができ、 低音から高音まで幅広い音域を拾うことができる。
  • Metal Marshmallow Pro
    マイクヘッドにオリジナルのプリアンプ内蔵のゲイン調整ノブがある。低ノイズで高感度のコンタクトマイク。ファンタム電源(48V)、9mケーブル、バランス接続、XLRコネクタ。
  • jez riley french
    イギリスで尊敬されるフィールドレコーダー兼サウンドアーティストであるジェズ・ライリー・フレンチのハンドビルドによるピエゾ素子によるコンタクトマイク。ハイドロフォンやエレクトリックマイクも販売している。
  • LOM Geofón
    一般的なコンタクトマイクではなく、フィールド録音用に調整された高感度の全方向受振器(ジオフォン)。元は地震測定用に設計されたものなので低音のみ。屋外と屋内の両方で使用できるように設計され耐候性ではあるが防水ではない。SNS上で非常に人気があるため手に入りづらい。
  • Ambient ASF-1 MKII
    高感度、プロ仕様ハイドロフォン。共鳴や音の色つけ等はほとんどない。12dbプリアンプ内蔵、ファンタム電源、XLRコネクト。ただし非常に高価。
  • AQUARIAN H2D HYDROPHONE
    高感度、低セルフノイズ、コンパクト設計のハイドロフォン。ケーブルの長さと2種類のアウトプット(XLR or 3.5mm)で選ぶ。価格も手頃。

プリアンプ リスト

コンタクトマイクは電気インピーダンスが非常に高いため、レコーダーのインプットよってはマッチングが不十分である場合があります。低音がほとんどなく、中・高音が誇張される場合は、マイクとレコーダーの間にプリアンプやインピーダンスアダプターを挟みます。(すでにマイクに内蔵されているものもあります。)

  • TRITON AUDIO
    コンパクトでとても人気の高いプリアンプ。マイクの使用に合わせてさまざまな種類が用意されいる。ピエゾ用のアンプもある。
  • AQUARIAN
    コンタクトマイクに適したプリアンプを提供しているアメリカのハイドロフォンメーカー
  • インピーダンス変換アダプタ
    50KΩの出力インピーダンスを200Ωの入力インピーダンスに変換するためのインピーダンス変換器。

固体と液体の音の使用

普段使用するエアマイクと併用して利用するとより深い音源になります。また、コンタクトマイク・ハイドロフォンのみでも非常にユーニークな音を得ることができるため、これらを楽器のように使用するアーティストも数多くいます。

BGD_SOUNDS (barbe_generative_diary SOUNDS)

BGD_SOUNDS では、Sound Visualization(音の視覚化)実験に使用する目的でストックされた、多くのフィールドレコーディング音源を低価格にて販売し共有しています。ほぼすべての音源は、192kHz-32bit floatで録音され、ロイヤリティーフリーにて自由に使用できます。定期的にリリースされますので、音源が必要な方はフォローにて最新情報をチェックしてみてください。

フィールドレコーディング入門 おすすめの機材

TASCAM Portacapture X8

フィールドレコーダーに人気の高いTASCAM Portacapture X8は、多機能なハンドヘルド・レコーダーです。ラージダイアフラムコンデンサーマイクを搭載、バックから取り出してすぐに録音を行うことができます。また左右に二つづつ、計4つのインプットがあり、外部マイク入力も行え自由なセッティングが可能です。

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