barbe_generative_diary SOUNDS の フィールドレコーディング

私がフィールドレコーディングを始めたのは、“Sound Visualization(音の視覚化)”というプロジェクトテーマのもとプログラム・アートを作るため、必要な音素材を簡易にてレコーディングしたことがきっかけでした。その後、様々な環境音に夢中になり、レコーディング技術や編集など、完全に独学で音について学び続けています。

下記映像は、スパークリングウォーターの音をプラグラムコードで視覚的に表現したものです。

本記事では、フィールドレコーディングにおける適切なマイクの選定と設置方法についての解説です。ビギナーでどのように録音を進めて良いか分からない方にとっての記事となります。

Index

基本的なレコーディングには、マイクロフォン1本で録音するモノラル録音と2本で録音するステレオ録音があります。フィールドレコーディングにおいてステレオ録音は音を立体的に捉える最も基本的なレコーディングです。

フィールドレコーディングにおけるマイキングの重要性

マイキングとは、フィールドレコーディングにて適切なマイクの選定と配置を行うことです。自然音を忠実に捉え、リスナーにその環境を臨場感豊かに伝えるための重要な作業になります。これにより、聴衆はまるでその場にいるかのように、自然の息吹やサウンドスケープの美しさに触れることができます。

適切なマイクの選定

フィールドレコーディングにおいて、適切なマイクの選定は重要です。自然音の捉え方や表現に影響を与えるため、慎重に検討する必要があります。以下は、フィールドレコーディングにおいて効果的なマイクを選ぶためのポイントと、主なマイクのタイプについてのガイドです。

1. マイクの種類と特性の理解

代表的なマイクロフォンの種類には、コンデンサーマイクとダイナミックマイクがあります。フィールドレコーディングの現場では繊細な音を録音することが多々あるので、主にコンデンサーマイクが使用されています。その他にも、立体音響として利用されるバイノーラルマイクや振動を音変えるコンタクトマイク、ハイドロフォン、電磁波を音に変えるマイクなどがあります。

  • コンデンサーマイク
    高い感度と広い周波数応答を持つ。
    繊細なサウンドや微細なディテールを捉えるのに適している。
    電源供給が必要なため、バッテリー駆動可能なモデルが便利。
    繊細な設計にて湿気等に弱く取り扱いに注意が必要。
  • ダイナミックマイク(一般的なフィールドレコーディングではあまり使われない。)
    高い耐久性とハンドリングノイズの抑制が特徴。
    高音質であるが、コンデンサーマイクほど広い周波数応答を持たない。
    高音圧縮に強く、風や雨などの外部ノイズにも頑強。
  • バイノーラルマイク
    人間の耳に近い録音にて、立体的で臨場感のある音場を再現。
    環境音をより自然に捉えることができる。
    主な種類にヘッドセット型とイヤーマイク型に分かれる。
  • コンタクトマイク
    物体の振動音を捉えることができる。
    一般的な空気振動とは異なる音にて魅力ある音が収集できる。
    コンタクトマイクの種類的には水中録音として設計されたハイドロフォンがある。

2. レコーディング環境に合わせた指向性の選定

マイクロフォンの指向性は、音の捉え方で選定します。一般的な指向性には、無指向性カーディオイドスーパーカーディオイド双指向性などがあります。

  • 無指向性(Omnidirectional)
    360度全方向の音を均一に収録。
    自然な環境音の録音に適している。
  • カーディオイド(Cardioid)
    前方への指向性が強く、背後からのノイズを最小限に抑える。
    環境音を絞り込み狙った音を捉える。
  • スーパーカーディオイド(Supercardioid)
    カーディオイドよりさらに指向性が強いマイク。
    収音角度が狭く周囲環境ノイズを入れず特定の音を収録する。
  • 双指向性(Bidirectional)
    前後の指向性があり、サウンドが前後から来る場面に有効。
    ダイアログや特定の音源に焦点を当てるのに適している。

その他、感度、周波数特性などマイク性能については前回の記事をご覧ください。
フィールドレコーディング入門|機材篇〜マイクロフォン【初心者向け】

環境音の理解とマイク配置

フィールドレコーディングにおいて、環境音を最良の形で捉えるためには、適切なマイクの配置を行います。環境の特性に合わせた戦略的なマイク配置は、自然な音場を忠実に再現し、不要なノイズを最小限に抑えることができます。

1. マイクの配置戦略

  • 環境の特性に合わせたマイクの配置
    開けたフィールドでは広範囲に配置することで全体の音を捉え自然な音を録音します、また、密集した森林や都市の場合には特定の方向に重点を置くと不要なノイズを抑えることができます。
  • マイクの高さや角度の選定による影響
    マイクの高さを地面近くに配置すると、地鳴りや動物の足音など、低音域のサウンドを効果的に捉えます。逆に、高い位置でのマイキングは風の音や高音域のサウンドに適しています。

2.ステレオ録音の方式(一般的なマイキングテクニック)

ステレオ録音は基本的に2本のマイクの間隔を開けます。録音する内容にもよりますが、通常、録音対象から数m離れた位置に設置します。

  • A-B方式
    最も基本的な方式。2本の無指向性マイクを平行に並べ録音することで、左右に届く音に時間差を作りステレオ感を作り出します。マイクを等間隔で配置するため、相互の干渉が比較的少なく、広い音場を捉えることができます。
  • X-Y方式
    主に2本の単一指向性マイクを利用し、互いに90度の角度で同じ位置に重なり合うように配置します。音の位置の正確さが高まり、音場が広がりすぎず、音を自然に捉えることができます。ステレオイメージがクリアで鮮明な音となります。
  • ORTF方式/NOS方式
    2本の単一指向性マイクを使用。ORTF方式はマイク間を17cm・角度を外側へ110度、NOS方式はマイク間を30cm・角度を外側へ90度音で配置します。音場をリアルに再現することに優れ、音量・ステレオ感の両方を得ることができます。ORFT方式はフランス放送協会、NOS方式はオランダ放送協会が考案。

3.フィルターの使用による外部ノイズの制御

  • 周囲の騒音や風のノイズへの対処
    フィールドレコーディングでは、風や遠くの交通音、その他の外部ノイズが課題となります。屋外でのレコーディングの場合、マイクに風防を取り付けることが必須になります。風防を取り付けることで環境音のクリアに収録します。
  • ノイズリダクションフィルターの活用
    レコーディング中に外部からのノイズを除去するために、デジタルなノイズリダクションフィルターを使用することもできます。ただし、過度なフィルター処理は自然なサウンドの特性を損なう可能性があるので慎重に使用します。

4.ダイナミクスと距離の調整

フィールドレコーディングにおいて、ダイナミクスと音源との距離の調整は、録音される音の幅広い表現を実現します。ソフトな自然音からラウドな音までをバランスよく捉え、遠くの音源を効果的に引き寄せる効果があります。

ソフトなサウンドからラウドな音までを捉えるためのダイナミクスの調整

  • マイクの感度とダイナミクレンジの確認
    マイクの感度やダイナミクレンジは、ソフトな自然音からラウドな音までを捉える上で重要です。広いダイナミクレンジは、細かい音のディテールや高音質のラウドな音までを正確に記録できます。
  • コンプレッサーの適切な使用
    コンプレッサーは、音のダイナミクスを制御ツールです。大きな音が過剰になるのを防ぎつつ、小さな音も十分に聴き取れるように調整します。慎重に使用することで、自然なサウンドのバランスを保つことができます。

マイクと音源との適切な距離の確保

  • 方向性マイクの活用
    遠くの音源を引き寄せるためには、指向性マイクを使用することが効果的です。カーディオイドや双指向性のマイクを選択し、音源の方向に向けて配置することで、遠くの音を集め、ノイズの低減に役立ちます。
  • マイクブームポールの利用
    高い位置にマイクを配置することで、遠くの音源をより効果的に捉えることができます。マイクブームポールを使用することで、マイクの高さを調整し、遠くの音源に焦点を当てることができます。

追記:フィールドへ出かける前のチェックとまとめ

フィールドレコーディングでは、機材の携帯性とバッテリーを考慮する必要があります。長時間の録音を行う場合は、バッテリーの確保及び、残量の確認を必ず行って出かけましょう。

フィールドレコーディングを行う際、良質な音源を得るための様々なテクニックがあり、録音環境や自身が持っている機材と相談しつつレコーディングを行います。そして、何より大切なのは、多くのフィールドへ出かけレコーディングを楽しむことです。

フィールドレコーディング おすすめの本

フィールド・レコーディング入門 響きのなかで世界と出会う – 柳沢 英輔

初心者にも分かりやすいようにフィールドレコーディングの魅力を解説しています。「フィールド・レコーディングとは何か?」「音とは?」「聴くこととは?」など、その他にも「歴史や理論」はもちろん、「実践的な機材の紹介・録音方法や環境の作り方」なども学べます。

実際、読むだけでなく、今すぐフィールドレコーディングに行きたいと思える本。カメラを旅行に持っていくように、ハンディレコーダーを持って出かけましょう。

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► 『フィールド・レコーディング入門 響きのなかで世界と出会う』(柳沢 英輔)
初版/ 2022.4.26
ページ数/302ページ
出版社/フィルムアート社
言語/日本語
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BGD_SOUNDS (barbe_generative_diary SOUNDS)

BGD_SOUNDS では、Sound Visualization(音の視覚化)実験に使用する目的でストックされた、多くのフィールドレコーディング音源の共有と販売を開始しました。音源は全てロイヤリティーフリーです。今後、少しづつリリースを行なっていきます。

最新のリリース情報やコミュニティなど、下記のbandcampにてフォローしてください。
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関連記事 ► フィールドレコーディング入門|導入篇〜レコーディングの手順やオススメ機材【初心者向け】

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