Date:2024-04-23
フィールドレコーディング入門|レコーディングのヒントとコツ【初心者向け】
本記事はフィールドレコーディングのヒントとコツについて。フィールドレコーディンはさまざまなサプライズがつきもので、実際多くのフィールドレコーディングを行いに学んだ内容をまとめています。
barbe_generative_diary の フィールドレコーディング
私の音の収集目的は、“Sound Visualization(音の視覚化)”というコンセプトアートの制作使用です。日常に溢れている目に見えない音の世界をグラフィックで視覚化し、ジェネラティブにミキシングすることで、新たなクリエイティブ表現やよりミニマルな表現に取り組んでいます。多種多様な国々のアーティストとのコラボレーションも行っています。
これまで録音してきた多くの音源を音楽プラットフォームbandcamp(BGD_SOUNDS)にて公開し、共有・販売を始めています。ほぼすべての音源は、192kHz-32bit floatで録音され、ロイヤリティーフリーにて自由に使用できます。定期的にリリースされますので、音源が必要な方はフォローにて最新情報をチェックしてみてください。
Sample |Original Heidelberg Printing Machine Sounds ”活版印刷機の稼働音”
フィールドレコーディング入門|レコーディングのヒントとコツ【初心者向け】
フィールドレコーディングで素敵な音を録音するためには、機材や音の知識だけでなく、録音技術も必要です。私なりに多くのフィールドレコーディングを行い、失敗と成功を繰り返しながら自身で学びました。もちろん、人それぞれ音との向き合い方があるのでこれが全てではありません、この記事は参考適度に自分なりのフィールドレコーディングの方法を見つけ楽しんでください。
Index
- Plan | 計画
- Listen|聴く
- Set|セティング
- Rec|録音
- Finish|撤収
- 録音上達のヒントとコツ
- BGD_SOUNDS (barbe_generative_diary SOUNDS)
Plan|計画
日常生活や旅先でハンディレコーダーをバックに忍ばせ、気づいた音を録音するといった音との出会いを目的としたものもありますが、快適なフィールレコーディングを行う場合には計画はとても重要です。フィールドレコーディングに出かける際考慮すべき点は主に以下3点。遠足へ出かける準備のように楽しく計画を立てていきます。
1:何を録音するのか?
録音対象を事前にイメージしておくことは大切です。音の用途や目的が決まっていれば良いですが、それがない場合、録音が初めての人にとって何を録音したら良いのかアイデアが浮かばない場合があります。
その際、参考になるのが、The Universal Category System(UCS)のカテゴリリストです。以前”サウンドエフェクトライブラリの管理方法|The Universal Category System”という記事にて、録音した音の管理方法にて書きました。カテゴリリストの中には、録音者が思いつく限り非常に多くの録音対象が掲載されているので、リストを読みながらアイデアを膨らます事ができます。
2:録音日の天候と時間帯は?
録音の内容が決まったら、その日の天候と時間帯を調べます。特に風には注意が必要です。風を必要とした録音でない限り、できるだけ風がない日を選ぶことで対象物のクリアな音源を録音する事ができます。
時間帯は、録音場所が同じところでもその時間帯によって音の風景は変わります。早朝はあまり人が活動しておらず静かで且つ、鳥がよく鳴きます。昼は、街の喧騒や車の音などが賑やかに、夜は虫の音や夜の賑わいなど、計画した録音対象に合わせて時間帯をイメージします。
3:持っていく録音機材などは?
録音対象や天候、時間帯が決まれば、機材を選びます。フィールドレコーディングは全ての機材を持っていくことは現実的ではありません。計画に沿った必要な機材を選びバックパックに詰め込みます。
また、準備するのは機材だけではありません、水辺で濡れた時のタオルや、雨が予想される場合のレインカバー、山では虫除け、夜の場合はライトなど、計画にある様々な状況下を想定し準備しましょう。
計画のヒント
計画では、Googleのスプレッドシートなどを使うと便利です。録音の目的と対象・場所と移動時間(GoogleMapへのリンク)・日付や天候・セッティング、持ち物リストなど、さらに録音終えた後のファイル管理・フォルダ名記入などに活用できます。また、周到な準備が必要な場合はロケハンで録音環境の確認を行います。
Listen|聴く
ロケ場所に到着し機材をセットアップする前に、少し時間をとり周囲を観察します。たとえロケハンを行ったとしてもフィールドの環境は常に変わっています。目を閉じ周囲の音に耳を澄まし、環境に溶け込むことで、マイク設置ポイントを探すだけでなく、心身ともにリラックスすることができます。
良い録音ポイントを見つけたら、その場で立ったり座ったり、頭を使い上下左右に動かしたりと自身がマイクであるかのようにマイクの配置を決定します。
聴く際のヒント
人が多くいる場所で、このような仕草をしていると、側から見るととても不審な人に映ります。フィールドレコーディングでは人の目は気にしない事が大切です。たまに職質されることもあるでしょう。ですが、何度も行っていくうちに慣れてきます。
また、周囲に迷惑をかけないようにする事はマナーとしてとても大切です。特に人通りの多い場所では、交通の妨げにならないように、周囲の人に一声かけるなどし、細心の注意を払います。
Set|セティング
事前に耳でリスニングを行いポジションを決めるとマイクの設置がスムーズに行えます。ですが、やはり耳とマイクは違うので完璧ではありません。マイクは指向が数度変わるだけで全体のバランスが崩れる可能性があります。
マイクのセッティング
マイクの設置では、録音の目的と対象物に応じて、モノラルまたはステレオ録音、マイクの種類と方式を選びセッティングを行っていきます。
以前の記事ではマイクを2本使った”ステレオ録音篇〜自然音の精密な捉え方ガイド”にて、マイクの設置法・ステレオ方式をいくつか紹介しています。
ヘッドフォンにてモニタリング
ざっくりとセットアップを終えたら、ヘッドフォンでモニタリングしながらマイクの調整を行っていきます。フィールドレコーディングでは周囲の音が大きいのでヘッドフォンはできるだけ遮音性の高いものを使用します。遮音が低いとマイクやゲインの調整がとても難しくなります。
Rec|録音
録音の方法は、ヘッドフォンでモニタリングしながら録音を行ったり、マイクから離れたりとさまざまです。モニタリングしながらの録音は、録音中も微細な音に注意を払ったり、その録音環境に溶け込むこともできます。ですが、機材環境やセッティングによってヒスノイズを生むことがあるので注意が必要です。
マイクから離れる行為は、自己音を消し、純粋なフィールドの音に近づけるのに最も最適な方法です。さらに記録した内容を聞き返した時の驚きと発見など多く得られます。
1:開始でのポイント
録音開始ボタンを押し、まず行うのは、録音場所や環境、日時を声で記録します。その後、録音開始の合図として、マイクの前で手を叩いたり指を鳴らすなどしイン点を記録しスタートします。
これは、のちに録音を聞き返した時にどんな音を録音したのか確認でき、録音開始の合図は編集時にイン点を波形で読み取る事ができます。
2:録音でのポイント
録音を行っているとすぐに場所を変えたり、マイクセッティングを変えたくなることがありますが、できるだけ長めに辛抱することが大切です。フィールドレコーディングでは嬉しいサプライズがつきもの、少し長めに回し、録音を楽しみましょう。
時間が許す限り、同じフィールドでいくつも録音します。環境は時間と共に常に変化し、全く同じ音を録ることはできません。微細な変化を楽しむのもフィールドレコーディングの醍醐味のひとつです。
3:ノイズを恐れない
スタジオ録音と違い、フィールドレコーディングにはノイズがつきものです。音を綺麗に音質良く録ることだけがフィールドレコーディングの価値を決めるものではありません。機材性能やセッティングによるクリップやヒスノイズは別として、その場の環境ノイズを恐れず、フィールドで感じる多様な音の波に耳を傾けます。
Finish|撤収
録音を終えたら、その場の環境を元の状態に戻します。 録音セッティングで動かした物を元に戻したり、ゴミが出た場合は必ず持ち帰ります。
さらに、フィールドレコーディングを行っていると、ポイ捨てされたゴミを多く見かけます。フィールドへの敬意として、それらのゴミも拾い持ち帰るとより良いです。来た時よりも美しくすることで、より一層フィールドレコーディングを楽しむことができます。
録音上達のヒントとコツ
多くの人が言うように、たくさんのフィールドレコーディングを行うことが一番の近道です。レコーディングを行えば行うほど録音はより良くなっていきます。実践的な失敗と成功の経験は、自身のスキルを磨き、独自のスタイルを開発します。そして最大の上達のポイントは何よりフィールドレコーディングを楽しむ事です。
BGD_SOUNDS (barbe_generative_diary SOUNDS)
BGD_SOUNDS では、Sound Visualization(音の視覚化)実験に使用する目的でストックされた、多くのフィールドレコーディング音源の共有と販売を始めています。ほぼすべての音源は、192kHz-32bit floatで録音され、ロイヤリティーフリーにて自由に使用できます。定期的にリリースされますので、音源が必要な方はフォローにて最新情報をチェックしてみてください。
フィールドレコーディング おすすめの機材
フィールドレコーダーに人気の高いTASCAM Portacapture X8は、多機能なハンドヘルド・レコーダーです。ラージダイアフラムコンデンサーマイクを搭載、バックから取り出してすぐに録音を行うことができます。また左右に二つづつ、計4つのインプットがあり、外部マイク入力も行え自由なセッティングが可能です。