[Series] はじめてのTidal Cycles : Part.3

Tidal Cycles でリズムを作る際、覚えるべき必要な表記方法がいくつかあります。Tidal Cycles では、これらを“Mini-notation”と呼び、プログラム内部で使用される長い関数のショートカットとして簡単に指示することができます。” “(double quotation mark)の内側に入力し、さまざまななリズムを生成していきます。

“Mini-notation” がどのように働くか図解も入れて解説しますが、実際にTidal Cyclesを起動し、入力実行をすることで、奏でるリズムにどのような影響があるか感覚的に理解を深めることをおすすめします。

[ ] square bracket
角括弧【グループ】

【説明】
角括弧 [ ] で囲むことで、音のパターンをグループ化することができます。

d1 $ sound "bd [hc hc]"

【コード解説】
[hc hc]をグループ化し、bdと同じ間隔で演奏されます。[ ] 内では、hcの音数だけ分割されます。

【追記/別表記】
同じ演奏として、. period ピリオド を使用したコード入力もできます。下記コードは先ほどのコードと同じリズムです。. ピリオドを使用する際は、前後にスペースを入れてください。

d1 $ sound "bd . hc hc"

* asterisk
アスタリスク【乗算】

【説明】
アスタリスク * は指定の音を乗算して演奏します。アスタリスク *の後ろに乗算したい数を指定します。

d1 $ sound "bd hc*3"

【コード解説】
[ ]と同様に、hc*3 がグループとしてbdと同じ幅の中でhcが3つ入ります。

上記コードは、“bd [hc hc hc]”と同じリズムになります。[ ]ではなく、数字として明記するので、何回入力したかがひと目でわかります。

! exclamation mark
感嘆符【複製】

【説明】
感嘆符 ! は指定の音を複製して演奏します。感嘆符 !の後ろに複製したい数を指定します。
先ほどの * アスタリスクとは違い複製なのでグループ化はされず等間隔で演奏します。

d1 $ sound "bd!3 hc"

【コード解説】
複製なので、bdが3つに複製され、等間隔にて演奏されます。”bd bd bd hc”と同じリズムになります。

/ slash
スラッシュ【スローダウン・除算】

【説明】
スラッシュ / は指定の音をスローダウンさせて演奏します。スラッシュ /の後ろにスローさせる回数を指定します。

厳密に言うとスローダウンというより、除算(分割)され音を出しています。後ほど解説。

d1 $ sound "bd/2"

【コード解説】
上記コードの場合、2回に1回 bd が再生されます。/3 とすると3回に1回になります。

先ほど、除算(分割)と言いましたが下記を参照してください。

d1 $ sound "[bd sd]/2 hc"

【コード解説】
グループ化された[bd sd]が交互に再生されます。いわゆる、/ スラッシュは、bdとsdを分け、[ ]の配列の順番にて演奏する指示になります。

, comma
カンマ【並列再生】

【説明】
音と音の間を , (カンマ) で区切ることで、並列再生することができます。

d1 $ sound "[bd sd, arpy:1 arpy:2 arpy:3]"

【コード解説】
bd sd と arpy:1 arpy:2 arpy:3 が並列して再生されます。
制作例としては、4つのバスドラムに重ねて、8つハイハットを入れるとエイトビートのドラムパターンなどを作ることができます。例)d1 $ sound “[bd*4, hc*8]”

{ } curly bracket
波括弧【ポリメトリックシーケンス】

【説明】
ポリメトリックとは、リズムの異なる音が同時に演奏されることです。

d1 $ sound "{bd sd, arpy:1 arpy:2 arpy:3}"

【コード解説】
bd sd にタイミングを合わせる形で、arpy:1 arpy:2 arpy:3の順に再生されます
, (コンマ)と比べると分かる通り、並行して重なる音のタイミングを合わせ再生されています。

{ }% curly bracket + percent sign
波括弧+パーセント【ポリメトリックシーケンス、分割】

【説明】
{ } %は指定の数だけ分割し演奏します。{ } %の後ろに分割させる数を指定します。また、分割されるので数が大きいほどテンポが速くなります。

d1 $ sound "{bd sd, arpy:1 arpy:2 arpy:3}%8"

【コード解説】
“” 内が8分割され bd sd とともに、{bd sd, arpy:1 arpy:2 arpy:3} が順番に演奏されます。

< > angle bracket
山括弧【交互】

【説明】
山括弧 < >で囲まれた音とそうでない音が交互に演奏されます。山括弧 < >内の音は一つづつ順番に演奏されます。

d1 $ s "bd <sd hh cp>"

【コード解説】
bd , sd , bd , hh , bd , cp と交互に演奏されます。これは、d1 $ s “bd [sd hh cp]/3″と同様の演奏になります。

あとがき

以上、Part.3では、さまざまな“Mini Notation”を紹介しました。これらを利用して、さまざまなリズムパターンを制作してください。また、今回紹介した以外にも“Mini Notation”があります。気になる方は、Tidal Cycles Webサイトをご確認ください。

今回使用したコードまとめをあらためて、記載します。中の数値を変えながら、リズムがどう変わるのかを試してください。


-- Mini-notation

d1 $ sound "bd [hc hc]" -- Create a pattern grouping

d1 $ sound "bd . hc hc" -- Shorthand for pattern grouping

d1 $ sound "bd hc*3" -- Repeat a pattern

d1 $ sound "bd!3 hc" -- Replicate a pattern

d1 $ sound "bd/2" -- Slow down a pattern

d1 $ sound "[bd sd, arpy:1 arpy:2 arpy:3]" -- Play multiple patterns at the same time

d1 $ sound "{bd sd, arpy:1 arpy:2 arpy:3}%8" -- Polymetric sequences

d1 $ s "bd <sd hh cp>" -- Alternate between patterns

hush

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[Series] はじめてのTidal Cycles
Tidal Cyclesを始めたばかりのビギナーの方へ、また自身の復習のためにシリーズにまとめ更新していきます。コメント等ありましたら、ヘッダーメニューからInstagramまたはTwitterアカウントへメッセージください。下記メニューは随時追加されます。

Part.1 / Tidal Cyclesのサンプルを使って音を鳴らす(基礎編)
Part.2 /Tidal Cyclesの仕様、リズム構成とテンポの設定方法(CPSとBPM)
Part.3 /リズムを作る表記方法(Mini Notation)
Part.4 /オシレーター(Oscillators)
Part.5 /ユークリッドシーケンス(Euclidian Sequences)
Part.6 /オーディオエフェクト(Audio effects)
Part.7 /シンセサイザー(Synthesizers)

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TidalCycles 参考書籍
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